広告の舞台裏に迫る!水戸excel  Focus Advertising

2016.5.16更新

2016 Summer Special Interview
伝統と革新のその先へ すずも提灯が照らす明るい未来

館内や駅に貼りだされたポスターはもうご覧になりましたか? 夏のシーズンビジュアルでは、水戸に縁を持つ伝統工芸品とのコラボレーションが実現しました。モデルとその世界観をやさしい灯りで照らしているのは、水府(すいふ)提灯の老舗・鈴木茂兵衛商店の「すずも提灯」です。今回は、伝統的な提灯をつくり続ける一方で、新たな提灯の魅力を発信する鈴木茂兵衛商店の7代目当主・鈴木隆太郎さんと鈴木紘太さんにお話を伺いました。

出会いに導かれて 伝統から逸脱した提灯づくり

―水府提灯と鈴木茂兵衛商店の歴史について教えてください。

江戸時代に旧水戸藩の内職として取りいれられたのが水府提灯の始まりです。水府とは水戸の地域を指す古くからある別称なんですね。九州の八女、岐阜、水戸が提灯の三大産地として知られていますが、水戸で提灯づくりが盛んになったのは西ノ内という丈夫な和紙の産地があったのも大きな理由です。水府提灯の特徴は、なんといっても竹ひごを一本一本輪にして、糸を絡めていく製法と西ノ内の和紙を用いた頑丈なつくり。鈴木茂兵衛商店も、慶応元年(1865)からそうした伝統技術を受け継いで今日まで提灯づくりを行っています。

―時代の流れとともに照明のトレンドや概念が大きく変化していると思いますが、そんな中で「すずも提灯」が生まれたきっかけはなんだったのでしょうか?

まず、提灯とは「畳む」ことができる照明器具を指しています。その定義を踏まえたうえで、鈴木茂兵衛商店では、従来のトラディショナルな形やデザインから逸脱したところにある提灯を「すずも提灯」と呼び、製作しています。大きなきっかけとなったのは、2008年に幼稚園の頃からの幼馴染みであるアーティストのミック・イタヤと再会したことです。その直後にたまたま、偕楽園の方から「夜梅まつりで提灯を出しませんか?」とオファーがきたんです。話を聞いてみると、期間中にお茶会をやるので、そこに提灯を飾ればいいじゃないかと。同時期にLED照明の開発を行うメーカーさんとの出会いもあったので、ミックにLEDを使った提灯のデザインを頼んだんです。従来の提灯の灯りは、ロウソクや白熱球を使用するため、発火する危険性があり、大幅にデザインを変えることが難しかった。けれども、LED電球を使うことで、提灯の上部を覆うことができるようになったんです。そこに、昔から店に遊びにきていて、提灯の特性を良くわかっているミックが斬新なデザインを起こしてくれた。それを元に社内で構造設計を行って新しい型を開発し、現在のすずも提灯・ミックシリーズが誕生したんです。

Profile

株式会社 鈴木茂兵衛商店

慶応元年(1865)、茨城県水戸市に創業した水府提灯の老舗。現当主は七代目にあたる鈴木隆太郎。「灯りのやさしさ」「形の美しさ」にこだわりながら、提灯の魅力を伝統工芸の枠を超えて発信している。グッドデザイン賞(2012)、偕楽園「夜・梅・祭」装飾(2009~2016)、DESIGNTIDE TOKYO出展(2011~2013)など国内外で受賞出展歴多数。

Access

〒310-0055 茨城県水戸市袴塚1-7-5
Tel.029-221-3966 Fax.029-231-7862

お車の場合:常磐自動車道水戸ICより国道50号経由 約7km/常磐自動車道那珂ICより国道118号経由 約8.5km/常磐自動車道水戸北スマートICより国道123号・118号経由 約3.5km
公共交通の場合:JR常磐線「水戸駅」より栄町経由茨大前行きバスで約15分。「盲学校前」バス停下車すぐ

photo/Yukiko Saito , text/Megumi Murayama